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120年ぶりの民法改正
「民法の一部を改正する法律案」(民法改正法案)が、2015年3月31日に閣議決定され、同日、国会に提出されました。これは、民法の債権関連の部分、いわゆる債権法の改正に関わる法案です。
債権法分野については、様々なルールが判例で形成されてきましたが、条文には記されていませんでした。そこで、「現代社会・経済への対応を図り、国民一般にわかりやすいものとする」ことを目的に、5年以上検討が重ねられました。
民法改正法案が成立すれば、債権法が含まれる民法財産編が1896年(明治29年)に制定・公布されてから、実に120年ぶりの大改正ということになります。
今回の改正で、従来判例に基づいて形成されてきた解決ルールなどが明文化されます。大改正となるので、2〜3年が周知期間に充てられ、施行されるのは2018年ごろとなります。
民法改正法案の主な内容
定型約款
約款に関する規定が置かれることになりました。定義に関する規定以外に、以下の規定が置かれています。
① |
定型約款の内容を合意したとみなされる場合に関する規定 |
---|---|
② |
①の要件を充たしても例外的に合意したとみなされない場合に関する規定 |
③ |
定型約款の表示に関する規定 |
④ |
定型約款の変更に関する規定 |
消滅時効
時効期間は、原則として債権者が「権利行使できることを知った時から5年」もしくは「権利行使できる時から10年」のいずれか早い方としています。現行の民法では「権利行使できる時から10年」とされていることから大きな変更といえます。
法定利率
民法が定める法定利率は、現在5%の固定制です。改正後は当初の法定利率を年3%とした上で、3年ごとに見直す変動制に変わります。
保証債務
「一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約(根保証契約)であって保証人が法人でないもの(個人根保証契約)については、極度額(責任〔保証〕の上限)を定めなければならない」としています。
債権譲渡
譲渡の対象となる債権の元々の債務者と債権者の間で、債権の譲渡を禁止し、または制限する旨の意思表示(譲渡制限の意思表示)をした場合(例えば、債権譲渡禁止特約を合意した場合)の、譲渡禁止もしくは譲渡制限の効力が、改正により、少し弱くなります。
賃貸経営に関連深い項目として特に注意すべき点
敷金、原状回復費などは改正後どうなる?
今回の改正には、敷金や修繕義務、原状回復費の負担、賃貸借契約の個人保証人との関係など、賃貸オーナーにとって重要なものが含まれています。
◇賃貸借契約と個人保証
個人保証は、極度額(保証人が責任を負う最大額)を定めた契約書を交わさなければ無効。
◇保証契約時の情報提供義務と保証の取消
賃借人が資産状況などについて虚偽説明をした際、保証人は保証取消が可能。
◇敷金の定義、返還時期、オーナー変更と敷金返還義務など
敷金の性質や返還時期の明確化。預けている敷金で賃料を払うことができないと明文化。
◇賃貸人の修繕義務の範囲
賃借人の責任以外で壊れたものは、賃貸人が修繕義務を負う。
◇賃借人の修繕権
必要な修繕は賃借人が行える。必要費であれば賃貸人に請求可。
◇通常損耗と原状回復義務
賃借人の責任で生じた損耗以外は、原状回復義務はないのが原則。特約で例外を設けることは禁じていない。
◇賃借人の収去権、収去義務
取り外し可能な附属物の撤去義務は賃借人が負う。以前は権利だけが定められていた。
◇一部使用不能と賃料の当然減額
賃借人に責任がなく賃借物の一部が使用できなくなった場合、賃料が当然に減額されます。
◇転貸と賃貸借契約解除
転貸(サブリース)のついても明文化。賃料不払いによる賃借人の契約が解除となると、転借人も退去。
◇賃借人の妨害排除請求権
所有者ではない賃借人も第三者の妨害排除が可能。第三者が勝手に賃借物件を占拠しているケースなど。
◇賃貸人の損害賠償請求権の消滅時効
物件明け渡し後1年間は契約違反による賠償請求が可能。明け渡し後に部屋の破損が判明したケースなど。
通達と慣習で行っていたことを明文化したことになります。